映画『カリーナの林檎~チェルノブイリの森から~』を観た感想

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ベラルーシの綺麗な自然と主人公カリーナのピュアさが際立つ、ていねいに作られた映画です。
プリピャチという小さな村は、今でも運搬には荷馬車を使い井戸水を飲み、鶏や山羊を飼って…という農家が多い地域。
都会に住むカリーナはその村に住むおばあちゃんが大好きで、2人でのびのびとした夏休みを過ごしています。

あえて全体の色の鮮やかさを抑えていて、服やスカーフのピンク・空と壁の水色がアクセントとなり、幻想的な映像美です。
庭にある林檎をもいだりんごや、カリーナの実(赤スグリっぽい)もジューシーでおいしそう。

そんな日常風景ですが、実はチェルノブイリの隣の村で…という話です。
カリーナ役の女の子がとにかくかわいいし、表情やちょっとした動きの演技も上手。
色使いやインテリアのセンスがすごく良くて、参考になります。北欧やヨーロッパのオシャレ映画好きの人にも良さそう。
見終わってから日本人の監督が撮ったと知って、とても意外でした。

子供でもわかりやすい話だし、この映画に何かしらの興味を持った人なら観て損はないと思います。

水に浮かんだリンゴ

 ↓ここから下にはネタバレがあるので、見終わってから読むことをおすすめします。

このごろは映画の内容を楽しむために、観る前にはあまり情報を入れないようにしています。
レンタル屋さんで選ぶ時も、タイトルとパッケージにある写真を軽く見る程度で説明をじっくり読まないようにしているんですが、この方式だと内容を勘違いしたまま見てしまうこともあると知りました。
というのも、この『カリーナの林檎』をなぜか私は「色々な試練があるけど、少女は全てを受け入れ成長していく話」だと思い込んでいたのです。
大きな思い違いですが、洋画コーナーに並んでいるピンクのパッケージ&ほっこりムービー風の映像写真なので、ハッピーエンドまではいかなくても現実的な終わり方なのだと…

そのため、終盤でカリーナが甲状腺の病気を発症したあたりで「結局、子供の純真さを前面に出して同情をひく映画か」と少し冷めた視点になってしまいました。
原発事故や放射性物質はもちろんあってはいけないですが、フィクションでも最低限のリアリティ内で描いてほしいかなと。
一度そういう風に思ってしまったら、だんだんと違和感の多いストーリー展開が気になりだします。

伯母は放射性物質の危険性を知っているはずなのに、カリーナを原発近くのおばあちゃんの家に滞在させ食事をさせておいて「なんで病気になったの」と泣き崩れています。
カリーナはおばあちゃんの家から持ってきた小石を宝物にしていて、がんで瀕死の母の手に握らせたり、闘病中の友達にプレゼントしたりと、知らないとはいえ残酷なふるまい。
おばあちゃんは神に祈ればどうにかなるとばかり言っていて、いくらなんでもベラルーシの人をバカにしているような…
さらに、フィクションであることを思い出させるようなラストにも冷めてしまいました。


…そんな感じでモヤモヤとした感想だったのですが、この映画が今関あきよし監督の発案による自主制作映画であることと、撮られたのが福島事故前の2003年だと知って印象はガラっと変わりました。
10年前に完成していた大元の『少女カリーナに捧ぐ』は、日本ではチェルノブイリ事故への関心の薄さから上映されていなかった(監督の不祥事の影響でベラルーシでのロードショー予定も中止)のですが、再編集して2011年末に『カリーナの林檎~チェルノブイリの森から~』と改題され劇場公開されました。

10年前の日本人は、放射性物質のことについて知っていても、生活に直結するという実感はなかったですよね。
それを考慮すると、「みかけは美味しそうに見える食べ物も毒に冒されている」ことや「何十年たっても放射性物質はなくならなず被害者は増えていく」というメッセージを伝えるために、あえてリアリティを追求せずにわかりやすい話にしたのかもしれません。

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