Category: 本・マンガ・映画・音楽

映画『キツツキと雨』・林業従事者とB級映画監督の穴熊クロスロード

映画『南極料理人』の沖田修一監督による、日本の田舎町が舞台のほんわか笑える系ムービー『キツツキと雨』の感想レビューです(さわり以外のネタバレなし)。
主演は役所広司さんと小栗旬さんで、どちらも人間関係に不器用な男性を演じています。
岐阜県の山奥で林業をしているごく普通の中年男と、映画の撮影のためにその田舎町に来た若者との心の交流がメインの話ですが、小さな笑いがあちらこちらに散りばめられていてゆるやかな雰囲気で観られます。

映画の冒頭から、見事に木の間伐や整理をする作業に目を奪われました。
大きなチェーンソーや重機を、まるで自分の手足のように自在に動かしている様子には、専門職の美意識を感じます。
これぞ男の世界!という感じでかっこいい。
さらっとした仕事のシーンですが、長年の木との付き合いで体に染み付いた動作に見えます。

杉林

この映画が上映されたのと同じ2012年に、役所さんは『わが母の記』の井上靖役の好演で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を獲得しています。しかし私は、『キツツキと雨』の主役・岸克彦(きし かつひこ)を演じている役所さんの方が好きです。
元々のキャラクター設定が大きく違うのはわかっていますが、あたたかい血の通った人間味が伝わってくるというか、本当に実在する人物に思えるのはなぜか岸克彦なんですよね。

この映画の70%から80%は、「その人にとって日常の行為」が描かれている気が。
一般的に生活の中で無意識にしているしぐさや癖・ひとりごと等。
他の映画では余計な事として省かれるような動作で、そんな小さいところまで演出するのはありえないんですが、『キツツキと雨』では観ている人が自然と登場人物に共感できる仕掛けにうまく使われています。
きっと、その積み重ねで岸克彦が実在の人のように思えるのでしょう。彼を完全なヒーローにしていない部分も好感が持てたり。
ちなみに『南極料理人』では生活状況が異世界なこともあり、余計な演出度は20~30%程度かな。
細かい小ネタが好きな人なら楽しめるはずです。
(ゆるいストーリー展開やのんびり温かい雰囲気の映画が苦手な人には、つまらない作品に思えそうですが)

そうそう、山崎務さんが難しい役どころを大熱演していて、ここ何年か分の助演男優賞を差し上げたい気分です!
観たらきっと誰もがわかってくれる・・・はず。

夏におすすめボサノヴァアルバム3枚・知ってる有名曲でリフレッシュ/動画

最近ボサノヴァにはまっています。リゾート気分で夏の暑さをやわらげてくれ気分転換になる感じがします。
ここでは、そこまでボサノヴァに興味が無くても、作業系BGMとして聴きやすい夏向けの曲が入っているアルバムを紹介。
定番の人気ナンバーから、耳なじみのある曲のカバーなど聞きやすいものをセレクトしました。

その1・『Bom Tempo(ボンテンポ)』Sergio Mendes 2010

セルジオ・メンデスは1966年にレコードデビュー(CDじゃなくて本当にレコード盤の時代)したボサノヴァ界のベテランピアニストでプロデューサー。ビートルズの「デイトリッパー」等のボサノヴァカバーでも有名です。
ボンテンポはブラジルの公用語・ポルトガル語で「いい天気」という意味合い。セルジオメンデス&ブラジル‘66,ブラジル‘77との往年のヒット曲のセルフカバーが中心なので、カフェやお店のBGMで耳なじみのあるボサノバがちらほら。

「踊れるアルバムに」というコンセプトで、ボサノヴァの名曲の中に最新のR&Bテイストやラップが入った軽快なアレンジがされ、昼間に聴くと気分がスカッと明るくなります。サンバっぽいノリの曲もあるのでドライブ中にも良さそう。
日本国内盤にはボーナストラックとして13曲目に、The Black Eyed Peas(ブラックアイドピーズ)と2006年にコラボレーションした「Mas que nada(マシュケナダ)」のリミックスバージョン入り。
上の動画で聴ける、2006年のアルバム『Timeless』に収録されたバージョンよりもドラマチックなアレンジで好きです。ピアノやボーカルの音が際立ち、中毒度がアップしてます。
2013年7月24日にはセルジオの歴史がわかる日本企画のベストアルバムが出たところなので、そちらもおすすめ。

その2・『30℃~トロントデュグレ~』Clementine 2002

ノンアルコールビール・サントリーオールフリーのCMの「天才バカボンメドレー」の歌声が印象的な、フレンチポップ&ボサノヴァ歌手クレモンティーヌ。このアルバムでは「パリジェンヌの少し特別な夏の1日」をイメージした選曲で、1960~70年代の世界的ヒット曲をボサノヴァカバー。

 

「オーシャンゼリゼ」や「サマータイムインザシティ」「雨にぬれても」等が、新しいイメージに生まれ変わってます。甘く気だるげなクレモンティーヌの歌声が、のんびりしたい時間にぴったりでリラックスできます。
空間作りやBGMにこだわることで有名な「ホテル・コスト」の音楽DJ担当ステファン・ポンポニャックがアレンジプロデューサーとして参加していて、スタイリッシュな雰囲気です。日常の喧騒を忘れたいときにおすすめ。
アニメ曲のボサノヴァバージョンは、『アニメンティーヌ』シリーズのアルバムに収録されています。バカボンの他にもエヴァンゲリオンの「残酷な天使のテーゼ」やドラえもんのテーマ曲など幅広くカバー・・・というか、こんな曲まで!?という意外なアニメ曲をさらっと歌いこなしていておもしろいです。

その3・『Cafe l‘acier(カフェラシェ』V.A 2011

HR/HM(ハードロック・ハードメタル)の有名ヒット曲を、カフェのBGMっぽいボサノバやハワイアン風・ジャズ風アレンジでカバー。
QUEENの「I WAS BORN IN LOVE」やEUROPEの「Final count down」等がボサノバとうまく融合し、新しい曲として生まれ変わった感じ。

 歌詞は元曲のまま英語ですが、歌っているのはmeg(ecosystem)・mia・mary等日本人の女性ボーカリスト。ゆるく生活感のない声が、メロディの良さを引き立てています。
アコースティックギターのザリザリ感やハモンドオルガン・ハーモニカが前面に出た素朴なアレンジもあり、ハードロックが苦手な人でも聴きやすいかと。
メタルは詳しくないですけど、いい曲もあるのかもと思いました。
動画は一番ボサノバの王道アレンジだったDef Lepperd(デフレパード)の「PHOTOGRAPH」(nakano youkiカバー)です。

ボサノヴァはブラジルで20世紀始めに出てきた音楽で、1950年頃から流行しだした比較的新しいジャンルです。「ドッドドドッド」というような独特のリズムグルーブをドラムやピアノで奏でるのが特徴。
ボサノヴァの名曲を初めて聴いてみようと思う人には、カフェ系のコンピレーションが色々と出ているので、そういったベストアルバムがとっつきやすいです。
1枚目に紹介したセルジオ・メンデスやアントニオ・カルロス・ジョビン等がボサノヴァの定番大御所アーティストなので、彼らの歌が入っていればまあハズレではないかと。
ちょっとしたBGMとして流すのに無難だし、気に入った曲やバンドがあったら深く掘り下げていく楽しみもありますよ。

荒川弘『銀の匙 Silver Spoon」』・リアルに農業高校ライフを体感

家族との確執から、進学校出身ながら寮があるという理由で大蝦夷農業高校(エゾノー)に行った主人公。
作者が北海道の酪農家に生まれ農業高校卒業ということもあるのか、農業高校に入った気分になれる漫画です。
同じようなジャンルの漫画ではお酒や発酵食品メインの『もやしもん(農大醸造学科)』と、家畜診療や病原菌メインの『動物のお医者さん(獣医学部)』も読みましたが、かなり雰囲気が違いますね。

乳牛たち


しっかりと軸となる流れがあり、青春もののストーリー漫画としてもきっちりしてます。1巻はなんか主人公が悶々としていて暗いけれど、巻を重ねるにつれて周りの人との関わりや行動で考え方も変わってくるので、どんどん読みやすくなりました。
おいしそうな場面がたくさんあって、影響される・・・新鮮でおいしいアスパラやベーコン、ふんぱつして食べちゃいました。
おなかが空いてるときに読むのは要注意!?


私が中学生の頃(20年位前)は、実家が農家じゃない場合、農業高校進学を考える生徒はほぼいなかったです。
担任や進路指導の先生はテストの成績で進学先をあてがっていたし、農業はかっこ悪いイメージでバカにされがちな時代でした。
けれど、周りでは大人になってから農業に興味をもつ人がけっこういるし、人生の選択肢のひとつとして若いうちに考えたり体験することは重要なはず。野菜・肉がどんな風に生産されているのかや「食べる」ということが色々な人の手で支えられているとわかっていると、人生観や世界観が拡がりそう。

そういった意味で、中高生のうちにこの漫画が読める人がうらやましいです。
7月にはアニメ化されるので、そっちも見てみようかな。

映画『ペンギン夫婦の作り方』・モリモリ食べてとにかく行動!

ほのぼのした映画が観たくて、なんとなく借りました。
主演の小池栄子さんがそんなに好きじゃないので最後まで観られるか心配でしたが、いい映画だと思いました。(ハリウッド大作よりは、マイナー作品が好みです)
どんな映画にも言える事ですが、この映画に関しては特に何も前知識がないほうが面白いので、「実話がベースの、石垣島が舞台の若い夫婦の話」程度で借りるかどうか決めるくらいのほうが楽しめると思います。恋愛というよりは家族愛な夫婦もの。
同じようなゆるいイメージの映画『めがね』や『かもめ食堂』よりは現実味あるストーリーですが、リアリティを気にする人には向かないです。
方言などがよく聞き取れないので、字幕入りで観賞。

ゴーヤチャンプル

きれいな景色やのんびりとした島の空気感、そしておいしそうな料理がいっぱいでてきてモリモリ食べてます。家で作っていたかぼちゃの炒め物みたいなのはなんなんだろう・・・沖縄料理でもなさそうだし・・・
小池栄子さん演じる主人公の行動力がすごくて、なんだか元気をもらえます。この役にはとても合ってますね。旦那さん役の人も自然な演技で、ほんとうの夫婦みたいな雰囲気。
夜、外の海風を浴びながらご飯を食べたり読書をしたりのシーンは、とても心地良さそう。
周りの人々もいいキャラの人が多くて、こんなところで暮らしてみたいな~と思ったり。石垣島は行ってみたい場所リスト入りです。
主役夫婦と世代が近いせいか、共感する場面がいくつかありました。

「日常の地続きで、ほんのりと元気が出る話」に浸りたいときにいいです。

岡本健太郎『山賊ダイアリー』・狩猟と鹿肉はヘルシー!?

漫画雑誌イブニングで連載中の、イノシシや鹿の狩猟体験エッセイ漫画。
猟師というと、山奥に住んでいて年配の人でというイメージがありましたが、この作者は30代でマンション暮らし!
もともと岡山県出身で自然の中で育ち、子供時代には周りに猟をしている人がいて親しみはあったそうです。

前はギャグ漫画を描いていた人で(でもその漫画はつまらなかった)、絵柄もシンプルで見やすく、軽く読めます。
今のところ3巻まで出ていて、1巻は主に狩猟免許取得~鳥猟、2巻はイノシシ解体&罠猟・銃についてがメイン。
最新刊の3巻では、鹿やスッポン猟・燻製作りなども。猟に出かけることが増えたからこその危険な体験にも続々と遭遇。

鹿注意の交通標識
読んでると、猟をしてみたいな~と思ったり、無性に肉が食べたくなったりしてしまいます。
都市暮らしですし、動物好きなので、いざ自分が狩って捌いてとなるとハードル高く感じますけどね。

先日スーパーで合鴨をみつけたので焼肉風に食べたところ、鶏肉に比べてかなり肉自体のにおいを感じました。合鴨は野生動物ではないのでくせは少ない方ですが、家族はあまり好みませんでした。
野生の鳥や鹿はけっこう独特の香りがあると描かれているので、おいしく品種改良された肉になれているとさらに食べづらいのかも。
イノシシも鹿も食べたことがありませんが、鹿は「高タンパク・低脂肪」なのでぜひ試してみたい。野菜スープでゆでたら、ツナ缶みたいに食べやすくなりそう。

昔から「女は山や海に入って猟をしてはいけない」という風習があると聞いていました。
なので猟師になるのは禁忌(タブー)だと思いこんでいたんですが、女の猟師さんの本も出ているので、今では完全にダメなわけじゃないのか。
読んでいるうちに、いつか山の近くに住んだら、猟をしてみたいと夢想してみたりも。早起きで山歩きして、野菜も肉もモリモリ食べてって、いやでも健康になりますわな。
あ、でも狩猟期間は冬だから寒そう・・・ううむ。